寄付金とは寄付によって個人や団体などに贈った金銭や財産のことです。
その寄付という行為ですが、公益の福祉に寄与するためのものや、特定の個人・団体を支援するためのものなど、渡す相手やその目的は様々あります。
しかし世の中には「常識」や「マナー」なるものが存在し、ただお金を渡せば良いとはならないケースが多いのです。せっかくの寄付行為で変な恥をかかないよう、ここでは寄付金にまつわる常識(と言われている)について解説します。
記事の内容
- 寄付金の渡し方:種類と【直接・関節】の違い
- 日本と海外の寄付金の違い
- 日本では最も多いであろう「義援金」という寄付金
- 恵まれない人や地域への寄付金
- 特定団体への寄付金
- 寄付金の渡し方:直接渡す場合の相手による方法と礼儀
幼稚園への渡し方
保育園への渡し方
学校への渡し方
甲子園出場校への渡し方 - 寄付金の渡し方【マナー】について
現金で渡すとき
封筒は白封筒?
封筒の書き方
封筒への現金の入れ方 - 寄付金を渡すときの文章について
義援金のときは封筒にどう書くのか? - 少額寄付のときの封筒
- 寄付金の渡し方は意外と気を使うことが多い
- 総括
執筆:KOJI
母子の絆:困窮する母子家庭の救済・ひとり親の支援
寄付金の渡し方:種類と【直接・関節】の違い
寄付とは「公共事業または社寺などに金銭・物品を贈ること」とされています。
現在では寄付金を送る先は多数存在しており、大規模自然災害の復興目的であったり、国際支援の一環であったり、その多くが「人を助けたい」という気持ちを叶えるための手段の一つとなっています。
これら寄付金の多くは支援団体や組織を通じた寄付となり、直接渡すような機会はないでしょう。
またもう一つは寺社仏閣や母校など、特定の団体への寄付金で、これらの場合は寄付先へ直接渡すということになります。
まずはこれら日本における「寄付金」というものの現状や種類など、寄付金にまつわる基本的な問題について解説します。
日本と海外の寄付金の違い
日本における寄付金は欧米などに比べ圧倒的に少ないといわれます。文化や宗教的な背景の違いなど様々な理由が語られています。
例えばアメリカ合衆国の国民の約8割はキリスト教徒といわれていますが、キリスト教圏(他の宗教でも見られるが)では「収入の10%を寄付する」という考え方が根付いています。
これは旧約聖書の「レビ記」などに記されている「全ての農作物の10%は神のものである」と説かれていたことが元で、これが今日も「什一献金」というかたちで残っているのです。
日本でも寄付がなかったわけではなく、寺社仏閣への寄進や公共施設建設のための寄付が盛んだった時期はありました。しかし社会福祉は国家が行うものという意識の変化と、日本人特有の宗教観のなさが「寄付は特別なもの」となり、「寄付は当り前の行為」という欧米との違いになったのです。
日本では最も多いであろう「義援金」という寄付金
日本では日常生活の中で寄付行為をすることは一般的なこととは言えません。しかしある地域が大規模災害に見舞われたときなどは、いつもと違った思いを抱くことがあるでしょう。
2011年3月11日、東北地方を中心に未曽有の被害をもたらした東日本大震災が発生ました。あのとき全国的に「義援金」を募る声が広がりましたが、これは「災害で大変な思いをされている方」への寄付金です。
各種調査の結果、震災の発生した2011年だけでも約5,000億円の個人寄付がなされ、国民の4人に3人が何らかの寄付をしたとされています。
あまり寄付をしたことがない人でも「何か役に立ちたい」という気持ちから、これほど多くの寄付金が集まったことから、日本における「寄付元年」ということが言われています。
世界的に見ても災害の多い日本では、それ以降も多くの災害に見舞われていますが、この義援金という名の寄付金は、すっかり日本の寄付金文化として根付いたと言えます。
恵まれない人や地域への寄付金
日本でもかつては相互扶助の精神に基づき、ご近所同士が助け合って生活する習慣がありました。それも社会構成や家族観の変化によって、人と関わらない生活が一般的になりました。しかし日本でも「恵まれな人」や「恵まれない地域」への支援や寄付がなくなったわけではありません。
その多くが発展途上国などに対する寄付金なのですが、先進国である日本国内においても、母子(ひとり親)家庭や交通事故遺児など恵まれない人は存在しており、それらの人たちを助けるための団体や、その団体を通じた寄付金で多くの恵まれない人たちが救われる現実があります。
これらの寄付金はNPO(非営利団体)やNGO(非政府組織)を通して支援するという形がほとんどで、直接困っている人に渡すような機会はほとんどありません。
特定団体への寄付金
「特定団体への寄付金」といってもその種類は多岐にわたります。昔からお寺や神社への寄付はありましたが、それ以外でも社会的成功を収めた人が母校や出身地の自治体に寄付するなど様々な形態が存在しています。
これらの寄付金の特徴として、その多くが「寄付したことを公にする」ということがあり、全てではありませんが、社会的成功であったり社会貢献している実績だったり、人に知られることを大いに意識した寄付金だと言えるでしょう。
そのようなことから、特定団体への寄付金の多くは直接会って手渡すことになります。場合によっては、その手渡す場面を報道してもらうことが目的であるでしょう。
寄付金の渡し方:直接渡す場合の相手による方法と礼儀
特定団体などへの寄付金でも「こっそり郵便受けへ入れる」や「匿名で宅配便」という方法もなくはありませんが、当たり前のように一般的ではありません。
一時期、児童養護施設に「伊達直人(タイガーマスク)」を名乗る匿名の寄付金が話題になりましたが、これはかなり特殊な例です。
普通であれば相手へ寄付する旨を申し出て、直接手渡すか振り込みをすることになります。それでは寄付金を渡す相手によって気を付けるべき点や、マナーなどは存在するのでしょうか。
ここからは寄付先によって考えるべき点を解説します。
幼稚園への渡し方
幼稚園といっても公立幼稚園と私立幼稚園では様々な違いがありますが、特に親御さんを悩ませることとして「幼稚園入園時の寄付金」があります。これは入園手続きの際にお願いされることなのですが、建前としては任意の寄付金になります。
しかし「任意」が故に悩ましく、実際のところほとんどの方が払われている「任意の寄付金」なのです。
だいたい「一口●万円」で寄付金の口数もあくまで任意です。これについては色々な意見がありますが、払わない選択をして不安を抱えるくらいなら、最低限の金額を寄付したほうが精神衛生上も良い選択です。ある意味事務手続き的な寄付金なので、その他の費用と一緒に振り込みなど機械的に済んでしまう寄付金です。
この入園時の寄付金以外にも、施設の修繕や拡張などの目的で広く寄付金を募るケースがありますが、税制上の「寄付金控除」の対象になることが多いので、優遇措置を受けるためには寄付申込書を記入し領収証を発行してもらうなど、所定の手続きが必要になります。
保育園への渡し方
子供の教育施設である「幼稚園」は文部科学省の管轄ですが、託児所的な意味合いの強い「保育園」は厚生労働省の管轄となっており、保育料も世帯所得で変わってくるなど違いがかなりあります。
また公立と私立、認可保育園と認可外保育園が存在し、私立保育園では幼稚園と同様、入園時に任意の寄付金を求められることがあります。なかには特定の政治政党と繋がりが深く、いろいろな名目で寄付金を求めてくる保育園も存在しています。
その他の寄付金については、幼稚園のケースと同じと考えて差支えはありません。
学校への渡し方
アメリカでは学校を運営する資金の中に占める寄付金の割合が大きく、収入の15%以上となっています。一方で日本では状況が違い、例えば私立大学で約2.5%ほどです。
しかし学校への寄付金の金額は年々増えており、文部科学省の発表する国立大学への寄付金は2004年には520億円だったものが、2018年には1,054億円と約2倍になっています。
大学によっては寄付金を募るホームページがあり、今ではクレジットカードで寄付を出来る学校もあります。公立の小中高校では「ふりさと納税」制度を利用した寄付も可能となっており、支援したい学校名を指定することが出来る地方自治体もあります。
もちろん学校へ申し出て寄付金を渡すことも可能ですし、中には学校が使用するための土地などを寄付される方もいます。
甲子園出場校への渡し方
全ての人が巡り会えることではありませんが、出身校が甲子園大会へ出場することは大変うれしいことです。しかし甲子園出場となると野球部の部費だけでは賄いきれないほどの費用が掛かります。
監督や選手たちの旅費と滞在費は、高野連と主催新聞社が一部を負担してくれますが、とても足りるものではありません。
そうなると野球部OBばかりか卒業者全員へ寄付金のお願いが連絡されることになります。野球強豪校のOBであれば年中行事なのかもしれませんが、そうでもなければ驚くことでしょう。たいていの場合は特別後援会が設立され、そこから寄付金のお願い通知がきます。
機械的な支払いで済むのですが、特別に寄付金を渡したい場合はのし袋へ「祝」や「祝甲子園出場」と書いて、特別後援会へ持参するとよいでしょう。
寄付金の渡し方【マナー】について
寄付金だけに限りませんが、お金を渡す行為には色々としきたりが存在しています。冠婚葬祭などでお金を渡すときも使用する封筒や表書き、果ては入れるお金の枚数など気を使う点は多いのです。
では寄付金を渡すときのマナーとはどのようなものがあるのでしょうか。その一つ一つを確認し、せっかくのお気持ちが台無しにならないようにしましょう。
現金で渡すとき
ここまで解説してきた寄付金の多くは、振り込みなど直接手渡ししないケースです。しかし自発的ではなくても町内会や祭りの寄付など求められることもあり、現金で寄付金を渡す場面も考えられます。礼儀として現金をそのまま手渡しするわけにもいかないので、封筒に入れて渡す必要があります。
封筒は白封筒?
寄付金を渡す時の封筒は「熨斗袋」か「金封」を使用しましょう。言うまでもありませんが、郵便用の封筒などは論外です。封筒は白封筒がもっとも無難ですし、とくに災害義援金などの場合にカラフルな封筒は相応しくありません。
封筒の書き方
寄付金を入れる封筒の書き方ですが、寄付金の内容によって使い分けをするのが礼儀です。比較的勘違いされていることで、寄付金の封筒に「寸志」と書いてしまうことが挙げられます。「寸志」とは「心ばかりのものです」という謙譲語で、立場が上の人から下の人へ渡す時に使う単語なので、寄付金の表書きとして相応しくないのです。
渡し先によって書き分けますが、団体や学校への寄付の場合「御寄付」ですし、寺社仏閣であれば「御寄進」「奉納」などです。
封筒への現金の入れ方
熨斗袋などではお金を入れる中封筒があり、そこへの入れ方にもマナーが存在しています。通常の寄付金であれば新札を用意して、紙幣は表向きに揃えて入れます。
ただ義援金などのお見舞いの場合、新札をそのまま入れるのは「その時を待っていた」と思われマナー違反となります。
また4・6・9という数字の金額は避けましょう。「4=死」「6=無(失う)」「9=苦しむ」を連想させるからです。
金額の記載は「大字(だいじ)」という旧字体の漢数字を用います。慣れない字体なので書くために練習が必要です。
寄付金を渡すときの文章について
寄付金を渡す時に文章は必要なのでしょうか。金額が大きい場合などは直接会って伝えたほうが効果的ですが、そうではない場合などは簡潔な文章にしておくべきでしょう。
どのような目的で使ってほしいかなど伝えたいことを最小限に書きとどめ、義援金の場合などは励ましの言葉を添えるとよいでしょう。
義援金のときは封筒にどう書くのか?
災害などで被害に会った方向けの寄付金(義援金)についての注意点ですが、お祝い事ではないので熨斗袋の使用は厳禁です。
白地のシンプルな封筒を使用し、表書きは「御見舞」や「震災見舞」「災害見舞」と書きましょう。
最近では義援金用の袋も販売されているので、それを利用するのも良いかもしれません。
少額寄付のときの封筒
寄付金に限らず、熨斗袋の種類を選ぶ基準があります。とくに寄付金の金額が少額なのに豪華な熨斗袋を使うと、いかにもアンバランスです。もし寄付金が1万円以下のようなときは、水引が印刷されているようなシンプルな熨斗袋を使うようにしましょう。
総括:寄付金の渡し方は意外と気を使うことが多い
寄付金とは「見返りを求めない心ばかりの善意」なのですが、マナーや礼儀が面倒だったり、寄付金自体に「相場」が存在していたり、意外と気を使うものです。せっかくの善意でつまらない思いをしないよう、寄付金の渡し方について知っておくことは社会人としての嗜みです。