遺贈とは?わかりやすく解説:相続や贈与との違い・手続きや遺留分

遺贈(いぞう)とは、遺言書によって財産のすべて、または財産の一部を無償で贈与することである。この際に、遺産を受け取る側を受遺者(じゅいしゃ)と呼ぶ。

通常、遺産の扱いは法律によって決まっている。そのため、遺言などがない場合、誰が相続人になるのか、誰が財産の何割を受け取るかは法律に則って決まる。

遺贈とは?わかりやすく

しかし、受遺者には法定相続人以外でもなることができるため、遺産を渡したい人を自分で決めたい場合に用いられる。遺贈・相続・贈与のそれぞれにメリット・デメリットがあるため、詳しく解説していく。

記事の内容

  • 遺贈とは:わかりやすく解説
  • 遺贈と相続の違い
  • 遺贈の手続き=弁護士や司法書士に頼む
  • 税金を安くするには
  • 特定遺贈と包括遺贈とは?
  • 遺留分にも注意が必要
  • 遺贈とは:わかりやすく贈与との違いを解説
    ①合意が必要かどうか
    ②撤回や放棄のやり方
    ③必要になる税金
    ④不動産取得税と登録免許税
    ⑤不動産登記の手続き
  • 死因贈与との違い
  • 生前贈与との違い
  • 総括

執筆:GOKURAKU
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遺贈とは:わかりやすく解説

遺贈(いぞう)とは、遺言により人(自然人、法人を問わない)に遺言者の財産を無償(法律上の無償の意。一定の負担を要求できるが対価性があってはならない)で譲ることである。遺贈は単独行為である点で、契約である死因贈与と異なる。(出典:Wikipedia

相続も遺贈もどちらも財産を渡すという点では同じだが、いくつかの違いがある。

遺贈と相続の違い

遺贈と相続にはどのような違いがあるのだろうか。

財産を受け取る人と税金という2つの面から説明していこう。

まず、財産を受け取る人についてだが、相続は法律によって決まった関係者だけに対して発生する。たとえば、夫がなくなった場合、配偶者や子供が法定相続人となる。

遺贈と相続の違い

それに対して遺贈は、法定相続人以外を受遺者に指定することができる。ただし、遺贈する場合は、遺言を残す必要がある。遺言書は、大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類ある。

「自筆証書遺言」は自分で作成し、「公正証書遺言」は公証役場で作成することになる。どちらも条件をしっかり満たしていれば、しっかり機能する。自筆証書遺言の場合、書き方を間違ってしまうと無効になってしまうため注意が必要だ。また、せっかく遺言書を書いたにも関わらず、誰にも発見されなかったり、誰かに隠されたりしてしまう恐れがあるため、公正証書遺言の方が確実性が高い。

次に税金の面での違いである。

遺贈の場合、法定相続人にかかる相続税の1.2倍の税金がかかる。さらに相続の場合は、「基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)」があるが、遺贈の場合は対象外となる。不動産を遺贈する場合は、相続税以外に不動産取得税がかかるケースもある。

相続の場合、遺贈よりも相続税が安くなることが多い。基礎控除があるし、不動産を受け取る場合であっても不動産取得税などがかからないからだ。

遺贈の手続き=弁護士や司法書士に頼む

遺贈する場合、まずは弁護士や司法書士といった専門家に相談することになる。専門家と相談することで、どの団体にどのくらいの財産を遺贈するかを決める。

その後、遺言執行者を指定する。

遺言執行者は利害に関係ない、中立な立場の人を選んだ方がスムーズに進むことが多い。

遺贈の手続き=弁護士や司法書士に頼む

遺言書は、自分で書く自筆証書遺言と公証人と相談して作る公正証書遺言がある。

自筆証書遺言の方が費用や手間がかからないというメリットがあるが、不備があると遺言書自体が無効になってしまう恐れがある。そのため、ある程度のコストをかけてでも公正証書遺言を作成した方がいいだろう。

遺言書ができたならば、大切に保管しておく。自宅に保管する場合もあれば、遺言執行者に預ける場合もある。

遺言者が亡くなった際には、身近な人、または通知人から遺言執行者に連絡をする。あとは遺言執行者が遺言書の内容に従って手続きを行う。

その後、法定相続人や関係者に遺言書の写しが送付される。そうして受け取った側が、財産を受け取るのか放棄するのかを決める。

受遺が決まったならば、遺言執行者が遺言書に基づいて財産を引き渡す。

このような流れで遺贈が行われるのだ。

税金を安くするには

基本的に遺贈は相続に比べると、かかる税金が高くなってしまう。

しかし、実は例外がある。

認定NPO法人に遺贈する場合、相続税が課税されないのだ。

ただし、認定NPO法人になるためには厳しい審査をクリアする必要があるため、数は決して多くない。

運営組織がしっかりしており、事業活動が明らかで、情報公開を適切に行っていないと認定NPO法人になることはできない。

そういった厳しい審査をクリアしたところが認定NPO法人となっているからこそ、安心して遺贈ができるとも考えられるだろう。

遺贈による節税を考えている人にとって、認定NPO法人への遺贈は注目されている。

特定遺贈と包括遺贈とは?

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類がある。

この2つは、遺贈方法と内容に大きな違いがある。

包括遺贈は相続に近いイメージで、すべての財産をまとめて、どのような割合で引き継ぐかを決める。

そのため、もし「遺産の2分の1」を引き継ぐ場合は、負債なども指定された割合に応じて引き継がなければならない。負債の金額によっては自分に取って不利になることもあるため、単純承認や限定承認、相続放棄といった選択肢が用意されている。

単純承認すると、指定された割合に応じて財産や負債を引き継ぐ。

受け取る意思がなかったり、負債が大きい場合などは、相続放棄を選ぶことができる。相続放棄する場合には、家庭裁判所に申述しなければならない。

また、遺贈を受けたことを知ってから3ヶ月経ってしまうと放棄できなくなってしまうため注意が必要だ。

包括遺贈はすべてをまとめてその割合に応じて引き継いだが、特定遺贈では特定の財産に限定して財産を引き継ぐことになる。

たとえば、「○○の土地を○○に遺贈する」といった形式で、誰が何を引き継ぐかが明確になっている。

包括遺贈のときと違い、負債を引き継ぐ心配はないので安心である。また、放棄する場合も意思表示だけでよく、裁判所への申述などは必要ない。

遺留分にも注意が必要

遺留分は、兄弟姉妹を除く相続人に対して、法律で認められた最低限の相続分のことである。

相続人の遺留分は、法定相続分として一定の割合が定められているため、万が一、遺産が受け取れなかったり、一定の割合よりも少なかった場合には、遺留分侵害額請求することができる。

たとえば、妻と子供1人を残して死んだ夫が、遺産をボランティア団体にすべて寄付したいと遺言書を残した場合、遺留分は妻が4分の1、子供が4分の1となる。

遺留分にも注意が必要

法定相続分では妻が2分の1、子供が2分の1なので金額は減ってしまうが、最低でも4分の1は相続できるようになっている。

遺留分という制度は、残された家族にも財産を受け取る権利があると考えられているために設けられている。

遺留分のことを考えずに遺言書を作成すると、相続人同士でトラブルに発展する可能性が高いため、必ず遺留分を考慮した遺言書を残すようにしよう。

また、遺留分には時効がある。

相続が発生したこと、または遺留分を侵害されたことを知った日から1年、実際に相続が発生した日から10年が定められている。この期間を過ぎてしまうと時効になってしまうため、遺留分侵害額請求はできなくなってしまう。

遺贈とは:わかりやすく贈与との違いを解説

遺贈と贈与は、どちらも財産を引き継ぐという点では同じであるが、いくつかの違いがある。

①合意が必要かどうか

贈与の場合、あげる方と受け取るほうで贈与契約を結ぶ必要があるため、お互いの合意が必要となる。

それに対して遺贈の場合は、あげる方だけの意思だけで行うことができるため、受け取る方の同意は必要ない。

そのため、あげる方が亡くなったときに初めて、自分が財産をもらえると知るケースもある。

②撤回や放棄のやり方

贈与の場合、あげる方と受け取る方が合意して契約を結ぶため、一方の都合で破棄したり、撤回したりすることはできない。もし契約をなくしたい場合は、新たに別途契約することで双方が合意すれば取り消すことができる。

遺贈の場合、遺言書によって意思を示すため、別の内容の遺言書を作ることで内容を撤回することが一方的に行える。

また、遺言書は日付が新しいものが優先されるようになっているため、新しい日付が書かれた遺言書を作れば、内容を撤回するような手続きは必要ない。

③必要になる税金

贈与と遺贈はかかる税金が異なる。

遺贈で受け取った財産に対しては相続税がかかる。

それに対して贈与で受け取った財産には贈与税がかかる。

ただし、死因贈与契約で財産を受け取った場合には、贈与税ではなく、相続税の課税対象になる。

一般的には、相続税より贈与税の方が金額が高い場合が多い。

④不動産取得税と登録免許税

不動産を受け取ると、不動産取得税や登録免許税がかかる。

そのため、贈与によって不動産を受け取った場合は、これらの税金がかかる。

遺贈の場合、受け取る方が法定相続人だと、これらの税制面で優遇される。不動産取得税は非課税となり、登録免許税は税率が低くなる。

しかし、法定相続人以外だと、贈与のときと同じように不動産取得税や登録免許税がかかる。

⑤不動産登記の手続き

死因贈与の場合、始期付所有権移転登記によって、生前からあげる人を仮登録することができる。この手続きをしておくと、贈与側が亡くなった後に、所有権が移る。

しかし、遺贈ではそのような手続きはできない。

そのため、確実に不動産を渡したい場合には、遺贈ではなく、死因贈与契約を結んでおいた方が良い。

死因贈与との違い

死因贈与(しいんぞうよ)とは、財産を渡す人と財産を受け取る人の間で、渡す人が死亡したときに事前に指定した方法で財産を渡すという贈与契約を結ぶことだ。

遺贈では誰にどういった財産を引き継ぐかは遺言書によって残しておく必要がある。

それに対して、死因贈与では書面は必須ではない。口約束であっても死因贈与の契約を成立させることができる。ただし、トラブルを予防するためにも何かしらの契約書は書いておいた方がいいだろう。

死因贈与との違い

また、死因贈与の場合、「負担付き死因贈与」といった形式をとることができる。

これは贈与を与える代わりに、受け取る人に対して、生活の面倒を見るなどの負担を課すものだ。こうすることで、ただ財産を与えるだけでなく、生前に介護の世話など、自分が望んだことを負担させることができる。

生前贈与との違い

遺贈は人が亡くなった後に権利などの移転が行われるが、生前贈与は生前に贈与契約を結ぶことで財産を譲り渡す。

そのため、亡くなる前か亡くなる後かで区別されることになる。

生前贈与の場合、贈与税の対象になるが、遺贈の場合は相続税の対象になる。

総括:遺贈とは?わかりやすく解説:相続や贈与との違いを理解

記事のポイントをまとめておこう。

遺贈について

遺贈と相続の違い

  • 相続は相続人が決まっているが遺贈は相手を選べる
  • 遺贈するためには遺言が必要
  • 遺贈には法定相続人にかかる相続税の1.2倍が課せられる
  • 遺贈は基礎控除の対象外となる

遺贈の実際の流れ

遺贈の税金を安くする方法

  • 認定NPO法人に遺贈すると相続税が課税されない

包括遺贈と特定遺贈の違い

  • 包括遺贈はすべての財産をまとめて引き継ぐ
  • 包括遺贈は負債を引き継いでしまう場合がある
  • 包括遺贈を放棄するためには家庭裁判所に申述する
  • 特定遺贈は特定の財産だけを引き継ぐ

相続の遺留分について

  • 法定相続人には最低限の相続分が決められている
  • 相続が少ない場合には遺留分侵害額請求ができる

遺贈と贈与の違いについて

  • 贈与の場合は双方の合意が必要
  • 遺贈は一方的に撤回や破棄ができる
  • 遺贈には相続税、贈与には贈与税がかかる
  • 法定相続人が遺贈する場合、不動産取得税が非課税になる
  • 遺贈では始期付所有権移転登記ができない

死因贈与と遺贈の違いについて

  • 死因贈与契約は口約束でも可能
  • 遺贈は遺言書がないと不可能
  • 負担付き死亡贈与だと自分の要望を負担させられる

生前贈与と遺贈の違いについて

  • 生前贈与は贈与税、遺贈は相続税が課される

財産を与える方法として、相続ではなく、遺贈という方法もある。遺贈ならば法定相続人だけでなく、相手を自分で選ぶことができる。

ただし、税金が高くなってしまったり、遺言書を作成したりという手間があるため、メリットとデメリットをよく知っておく必要がある。

正しい知識を身につけ、自分が望む遺贈を行おう。

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