母子家庭はかわいそう?公正データで検証:一人っ子の実情も

母子家庭はかわいそう

“母子家庭に育った人はかわいそう”というイメージを持っている人もいるではないのだろうか。現代では様々な理由で、母親と子供だけの家庭、つまり“母子家庭”になることも少なくない。母子家庭と言うと何かと偏見を持たれることもあると思うが、本当に母子家庭で育つ子供はかわいそうなのだろうか?

本記事では、母子家庭の状況と、母子家庭がかわいそうだと思われる理由を調査した。

記事の内容

  • 母子家庭はかわいそう?割合は1.42%
  • 母子家庭に至る理由5つ
  • 就業状況はどうか
  • 就業有無
    就業状況
  • 母子家庭はかわいそう?収入状況
  • 子供に十分なお金をかけられない?
    高等学校
    大学
  • 母子家庭の子供の平均人数はどうか
  • 世帯構成の割合
  • 母子家庭に至った際の年齢(母親と子)
  • 母子家庭がかわいそうだと言われる理由
  • 一人っ子は本当にかわいそうなのか?
    Aさん・Bさん・Cさん・Dさん
  • 総括

執筆:NAMOTO
母子の絆:困窮する母子家庭の救済・一人親の支援

母子家庭はかわいそう?割合は1.42%

そもそも母子家庭はどれくらいの割合で存在するのだろうか。

東京都福祉保健局の調べによると、平成27年時点で全国の一般世帯53,331,797世帯のうち、754,724世帯が母子家庭となっている。

これは、一般世帯における約1.42パーセントが母子家庭ということになる。

また、母子家庭の割合は調査した年度によって、若干の減少がみられることがあるも、全体的に増加傾向にあるようだ。

参照:genjou.pdf (tokyo.lg.jp)

母子家庭はかわいそう?割合は1.42%

母子家庭に至る理由5つ

母子家庭に至る理由5つ

母子家庭に至るまでには、様々な理由があると考えられるが、具体的にどのような理由が多いのだろうか。

ここでは、母子家庭に至った理由を割合が多い順にまとめてみた。

  1. 離婚 79.5%
  2. 未婚 8.7%
  3. 死別 8.0%
  4. 遺棄 0.5%
  5. 行方不明 0.4%

一番多い理由として、挙がっていたのは“離婚”だった。性格の不一致や、借金など様々な理由で離婚となり、母子家庭に至るケースだ。

離婚の次に多いのが、未婚で母親になった場合だ。こちらも様々な理由で、結婚をせずに母親のみで子供を育てることになったケースだ。

死別の割合も未婚の次に多かった。交通事故や病気などの急な不幸で、意図せず母子家庭になってしまうことが多いだろう。夫が夫として、または父親としての責務を放棄してしまった場合の遺棄も一定数いるようだ。

また、夫の行方が分からなくなってしまい、母子家庭と至るケースもあるようだ。

就業状況はどうか

母子家庭における就業状況はどのようになっているのだろうか。

ここでは母子家庭における母親の就業状況を見ていこう。

就業状況はどうか

就業有無

  • 就業している・・・81.8%
  • 就業していない・・9.4%

母子家庭では、ほとんどの母親が就業している。何らかの理由で就業していない、もしくはできない人も少数だがいるようだ。

就業状況

  1. 正規職員・従業員・・・44.2%
  2. パート・アルバイト・・・43.8%
  3. 派遣社員・・・4.6%
  4. その他・・・2.5%
  5. 会社役員・・・0.9%
  6. 家族従業者・・・0.5%

一番多かったのは、安定した正規職員・従業員だった。その次は、パート・アルバイトとなっている。子供が小さいうちは、なかなか正社員でフルタイムで働くことは難しいかもしれない。

ただ、子供が小さいうちはパート社員で、一定時期を過ぎたら正社員雇用というような会社もあるようだ。

※「母子家庭に至る理由」「母子家庭における就業状況」のデータ参照元:厚生労働省平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 (mhlw.go.jp)

母子家庭はかわいそう?収入状況

母子家庭はかわいそう?収入状況

母子家庭では、主に母親の収入が生活源となるが、平均的にどのくらいの収入があるのだろうか。

ここでは、母親の収入と行政からの手当てや、家族からの援助などを含めた世帯全体での収入を調査した。

  1. 400万円以上 30.8%
  2. 200~300万円未満 26.2%
  3. 300~400万円未満 19.4%
  4. 100~200万円未満 17.4%
  5. 100万円未満 6.2%

世帯全体の収入を見ると、400万円以上が最も多かった。収入平均は348万円で、平成23年度調査時の293万円と比較すると、55万円増加している。

更に一般世帯と母子世帯の収入を比較してみよう。

厚生労働省による平成 29 年 国民生活基礎調査の概況によると、18歳未満の未婚の児童がいる世帯の平均年収は739.8万円となっている。つまり、母子家庭では両親がいる世帯の約半分の収入となる。

子供に十分なお金をかけられない?

先ほどのデータから、母子家庭では子供に十分なお金がかけられないのではないか?と思う人もいるだろう。ここでは、子供にかかる年間費用と平均収入額から、母子家庭では子供に十分なお金をかけられるのかを調査した。

また、ここでいう費用には以下が含まれる。

  • 衣類・服飾雑貨日
  • 食費
  • 生活用品費
  • 医療費
  • 保育費
  • 学校教育費
  • 学校外教育費
  • 学校外活動費
  • 子供の携帯電話料金
  • おこづかい
  • お祝い行事関係費
  • 子供のための貯金・保険費
  • レジャー・旅行費

では、実際にどのくらいかかるのかを、就学区別分に見てみよう。

  • 未就園児・・・約85万円
  • 保育園・幼稚園児・・・約120万円
  • 小学生・・・約115万円
  • 中学生・・・約155万円

参照:平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 全体版(PDF): 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp)

内閣府の調べでは、中学生までのデータとなるが、未就園児の年間費用は思ったよりもかからないようだ。一番費用がかかるのは中学生で、やはり中学生となると教育費や、お小遣い、携帯代金などの費用も上がってくるためと思われる。

しかし、それでも母子家庭の平均年収が348万円なので、特に贅沢をしなければ十分に生活をしていけそうだ。

今回の調査内には、学校外教育費つまり塾などの費用も含まれているので、教育にお金がかけられないということもないだろう。

では、高校や大学などはどうだろうか。教育費以外は恐らく中学生とそこまで変わらないと思われるので、ここからは教育費のみで調査してみた。

高等学校

種別

公立

私立

学校教育費

280,487円

719,015円

学校外教育費

176,893円

250,860円

合計

457,380円

969,911円

高校では公立か私立かで、だいぶ教育費が変わってくる。私立に行くと、公立の約2倍はかかってしまう。

先の内閣府の調査より、中学生にかかる費用が教育費を除くと約100万円ほどだ。そこから上記の表より、もし私立に行くとなると、教育費が約100万程かかるので、合わせて年間200万円ほどかかる。

母子家庭の平均年収を考えると、少し厳しいかもしれない。

しかし、令和2年4月より「私立高校授業料実質無料化」制度もスタートしているので、そのような行政の制度をうまく活用するといいだろう。

参照:平成30年度子供の学習費調査の結果について:文部科学省

大学

  • 私立・・・約130万円
  • 公立・・・約93万円
  • 国立・・・約82万円

大学もやはり私立が高額となっている。しかし、大学生ともなると、母子家庭でなくてもアルバイトを始める人も多い。

また、奨学金制度なども利用できる。きちんと計画を立てれば、母子家庭であっても大学へ行くことも十分可能だろう。

参照:①私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について:文部科学省 (mext.go.jp)

参照:②国公私立大学の授業料等の推移 (mext.go.jp)

母子家庭の子供の平均人数はどうか

母子家庭の子供の平均人数はどうか

母子家庭において、子供の数はどのくらいが平均なのだろうか。もちろん、子供の数が多くなればなるほど、それだけ子供にかける費用も高額になる。母親の収入もそれなりに必要となり、周りのサポートも必要になるだろう。

ここでは、母子家庭における子供の人数について調査した。

  • 1人 57.9%
  • 2人 32.6%
  • 3人 6.8%
  • 4人以上 1.6%

最も多かったのは1人、つまり一人っ子が半数以上を占めていた。平均人数は1.58人なので、母子家庭では1人~2人の子供の場合が多いようだ。

しかし、中には4人以上の子供がいる世帯もあり、家族や周りのサポートが重要になってくるだろう。

世帯構成の割合

世帯構成の割合

母子家庭の場合、母親の両親など周りのサポートを受けながら、暮らしていることも多いだろう。

ここでは、母子家庭における世帯構成を調査した。

  1. 母子のみ 61.3%
  2. 親と同居 27.7%
  3. 祖父母 3.6%

母子のみで生活している場合が半数以上を占めていた。同居の場合はやはり、母親の親、つまり子供から見た祖父母と一緒に暮らしていることが多いようだ。

また、母親の祖父母、子供から見た曽祖父母と暮らしている場合もあるようだ。

母子家庭に至った際の年齢(母親と子)

母子家庭に至った際の年齢(母親と子)

ここでは、母子家庭に至った際の年齢について母親と子、双方を調査した。

母親

  1. 30~39歳 43.7%
  2. 20~29歳 25%
  3. 40~49歳 18.8%
  4. 20未満、50~59歳 1.7%
  5. 60歳以上 0.1%

一番多いのは、30歳~39歳だ。その後が20歳~29歳となっている。平均が33.8歳と、年齢的には落ち着いた時期に母子家庭となるケースが多いようだ。

子(末子)

  1. 0~2歳 38.4%
  2. 3~5歳 19.5%
  3. 6~8歳 12.6%
  4. 9~11歳 7.6%
  5. 12~14歳 5.4%
  6. 15~17歳 2.5%

子供の年齢は、平均が4.4歳で、比較的に幼い頃に母子家庭となるケースが多い。幼少の頃に母子家庭となったため、父親のことは覚えていない場合も多々あるようだ。

「母子家庭における子供の平均人数」「母子家庭における世帯構成」「母子家庭に至った際の年齢」のデータ参照元:厚生労働省平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 (mhlw.go.jp)

母子家庭がかわいそうだと言われる理由

なぜ母子家庭はかわいそうだと言われるのだろうか。

ここでは、母子家庭がかわいそうだと言われる理由をご紹介しよう。

  1. 子供に十分なお金をかけられない
  2. 母子の時間が確保できない
  3. 子供が一人の時間が多い
  4. 子供の人格形成に影響を与える可能性がある

主に考えられるのは、以上の4つではないだろうか。子供にかける費用に関しては、先の「母子家庭における収入状況」を参考にしてほしい。

世帯の平均収入額から、行政の制度などを利用することで、教育なども問題なく受けさせてあげられると思われる。母子の時間については、確かに母子家庭となると、母親が仕事で忙しく子供と過ごす時間が短くなる可能性はある。

しかし、これは母子家庭に限ったことではない。現代では、両親共働きのことも多く、どちらも夜にならないと帰ってこないことも多い。

また、子供も習い事や塾などに通っていることも多いので、母子家庭が原因で親子の時間がないとは言い難いだろう。子供が一人の時間が多いのも、これも先ほどと同じく、両親がいる家庭であっても共働きで、兄弟がいなければ一人で過ごす時間が多くなるだろう。

最後の子供の人格形成についてだが、これは離婚などによって結婚に対する見方の変化などに影響を及ぼす可能性はある。しかし、母親が無理をして婚姻生活を続ける方が逆に子供にとってはつらいものだ。

子供は母親の感情を敏感に感じ取るという。母親が幸せでないと、子供も幸せではないだろう。これは、母子家庭だけではなく全ての家庭に言えることだ。

大切なのはどんな家庭環境であっても、子供と向き合って愛情を注いであげることだろう。

一人っ子は本当にかわいそうなのか?

母子家庭では、母親がフルタイムで仕事をしていることが多いため、一人っ子だとなおさらかわいそうだと言われる場合がある。

果たして母子家庭で育つ一人っ子はかわいそうなのだろうか?

ここでは、実際に母子家庭で育った人の意見をご紹介しよう。

母子家庭がかわいそうだと言われる理由

Aさん・女性

父と母は私が中学の頃に離婚しました。私は母と暮らすことになり、元々フルタイムで働いていた母は、更に仕事を増やして働くようになりました。

元々両親は、小さいころから共働きで父親も家にいることが少なかったので、父親と過ごす時間は多くはなく、離婚後もそこまで気持ちに変化はありませんでした。

小さいころから、ひとりでゲームをしたり人形で遊んだりするのが好きだったので、一人っ子だから寂しかったという記憶はあまりありません。家が裕福だったわけでもありませんが、母のおかげで特に不自由なく育ちました。

現在は、結婚して毎日楽しく暮らしています。私を懸命に育ててくれた母には尊敬と感謝しかありません。

Bさん・女性

小学生の頃に両親が離婚しました。離婚したばかりの頃は、父がいなくなって寂しかったのですが、すぐに慣れました。母は毎日仕事をしていたので、ほとんど一人で過ごすことが多かったです。

でも友人と遊んだり、ひとりで遊ぶのも好きだったので寂しくはありませんでした。今では自身も結婚して、子供もいます。

Cさん・女性

幼少期に両親が離婚しました。まだ小さかったので、父親のことは覚えていません。

しかし、離婚したことに対して、不満に思ったり怒りを覚えたりとかはありませんでした。母は仕事で忙しくて、あまり構ってもらえませんでしたが、それでも母にはとても感謝しています。

Dさん・女性

小さいころに両親が離婚して、母親と二人暮らしでした。母親は毎日仕事で忙しく、一緒にいられる時間は少なかったです。

しかし、寂しいと感じたことはありませんでした。自分も母のために何かしてあげたいと、自分なりに色々考えて母のお手伝いをしていました。母は忙しいながらも、私と一緒に過ごす時間を作ってくれてとても幸せでした。

実際に母子家庭で育った人の意見を見ても、苦労することはあっても自分をかわいそうだと感じている人はいなかった。逆に、母親や祖父母との絆が強くなっている人が多いように見える。

子供の時には、父親がいないことで悩むこともあるようだ。しかし、子供や思春期の頃には、小さな事であっても悩むことが多いので、母子家庭でなくても様々な悩みを抱えていることは多い。

ここでご紹介したのは、ほんの一部だが、母子家庭ならではの悩みを持つことはあっても、それを不幸だと思っている人はいなかった。

総括:母子家庭だからかわいそうと決めつけない

結論から言うと、母子家庭だからかわいそうだと思うのは間違いだろう。

母子家庭に限らず、父子家庭でもそうだが、ひとり親だからかわいそうとは限らない。

かわいそうというのは、客観的な意見になるので、おそらくかわいそうと思うのは、母子家庭で暮らす本人の意見ではなく、周りの意見ということになる。

母子家庭だからかわいそうと決めつけない

母子家庭では、金銭面や親と子で一緒に過ごす時間の確保など、苦労する場合も多いだろう。しかし、両親が揃っている家庭なら、何も問題が発生しないのかと言うとそれも違う。大切なのは、親と子の向き合い方、そして周りのサポートではないだろうか。

昨今では、様々な“家族のかたち”がある。父母がいるのが当たり前という考え方はもう古いのかもしれない。父親や母親がいなくても、それをネガティブに捉える必要はない。

また、周りもサポートするのは大切だが、変に気を遣う必要もないし、偏見を持つことも間違いだろう。それが、その人の“家族のかたち“なのだ。

様々な“家族のかたち”を認め、お互いに尊重し合って助け合うことが大切ではないだろうか。

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