募金と寄付の違いや意味:義援金や寄付金控除、税金について

募金 寄付 違い

寄付の依頼や募金箱、義援金募集のテレビコマーシャルなどは誰もが一度は目にしたことがあるだろう。街中の募金箱、街頭に立って声を張り上げるキャラバン隊、有名番組内での告知や災害時の特別支援の募集など、その様態は実に多彩だ。

「ご寄付をお願いします」「募金活動にご協力ください」「義援金の受付はこちらです」といった具合に各種案内がなされる中、「ぜんぶ同じなのでは?」と不思議に思われた方もいるかもしれない。

この疑問に対する答えは「ノー」である。寄付、募金、義援金はそれぞれ異なる意味を持ち、集まったお金の用途が全く異なるケースもあるのだ。

本記事ではこれらの違いを具体的に述べ、こうした金銭提供が持つ意味や、寄付などを行なった側にもたらされるメリットについても紹介する。この記事を参考に、慈善活動や私的な金策を検討してみると良いだろう。

記事の内容

  • 募金と寄付の違い:義援金も考える
  • 寄付するという言葉の意味には物品提供も含まれる
    寄付・寄贈・寄附
  • 「募金する」は意味の解釈が分かれる言葉
  • 義援金、支援金との違いをまとめて確認してみよう
    支援金・義援金
  • 募金と寄付の違い:税金納付額に影響する
    所得税納付額を小さくする(毎年発生)
    住民税納付額を小さくする(毎年発生)
    固定資産税を少なくする(単発)
    相続税納付額を小さくする(単発)
    法人の場合
    個人事業主の場合
  • 募金で寄付金控除が適用されないケースとは
  • 募金と寄付の違い:目的は明確に意識しよう
  • 総括

執筆:SUBARU
母子の絆:困窮する母子家庭の救済・ひとり親の支援

募金と寄付の違い:義援金も考える

まずは寄付という言葉が意味するところを確認していこう。金銭を提供するというイメージばかりが先行しがちな言葉であるが、厳密に定義するとさらに「寄贈」という分類が存在し、これには「金銭提供」の意味は含まれていない。

また、混乱を招きやすい「寄附」という表記との違いもあわせて理解しておこう。

寄付するという言葉の意味には物品提供も含まれる

寄付という言葉は、多くの人がイメージする「善意での金銭などの無償提供」という概念を最も広く包括する言葉である。この中にいくつかのバリエーションがあるという認識のもと、読み進めていくと良いだろう。

寄付

公共の事業や公益性の高いイベントなどに対して、金銭や物品を提供することを指す言葉である。つまり、「寄付」には金銭のみならず物品提供の意味合いも含まれるのだ。貴重な文化財や美術品の寄付、ランドセルの寄付といった例を挙げればイメージしやすいことだろう。

さらにはこうした具体物以外に、土地などを寄付することも可能である。これは特に、土地にかかる固定資産税や相続税の節税、さらには管理の手間の軽減といった利己的な理由で行われることが多い特殊な寄付の代表格であるとも言える。

また、ふるさと納税も、「納税」という表現ではあるが税務的な取扱上は寄付として位置付けられている。このように、寄付と一口に行ってもその様態は実に多彩であり、また、寄付先によっては思わぬ特典が生じることもある。

相続税を公益法人などに寄附したとき|国税庁

出典:相続税を公益法人などに寄附したとき|国税庁

寄贈

寄付の中でも、物品提供に限る場合に用いられることの多い言葉である。「寄付」の意味合いに含まれる言葉であるため、「寄贈する」ことを「寄付する」と表現しても間違いではない。

一方で、金銭提供を「寄贈」と表現することは正しいとは言えない。公共性の高い組織に対して「物品を贈ること」を意味するこの言葉には、金銭提供の意味合いが含まれないということを理解しておこう。

寄附

「寄附」という言葉は、「寄付」と表記される単語と基本的に同義である。イメージとしては、「寄附」をカジュアルに表記したものが「寄付」であるという認識で問題ない。

基本的に、「寄附」はより厳格なシーンで使用される単語であり、法律や各種税務書類などに用いられるのは、もっぱらこちらの表記である。国税庁などのWEBサイトを確認すれば、こうした使い分けが顕著に現れていることがわかるだろう。

「寄付」は簡易な表現への置き換え程度の意味合いであるため、日常的に使用する分にはこの「寄付」という簡便な表記で何ら問題はない。

「募金する」は意味の解釈が分かれる言葉

「募金する」は意味の解釈が分かれる言葉

一方で、定義が曖昧になりやすいのが募金という言葉だ。募金するという言葉を聞けば、多くの人が街頭などで募金箱に金銭を投じることや、自治会などの「募金活動」という名の集金をイメージすることだろう。

このように、募金は「金銭を提供する」というイメージが定着して久しい言葉であるが、しかし厳密に解釈すれば「お金を募る」という意味を持っており、「金銭を提供してもらう」側の立場に立った言い回しである。すなわち、言葉の意味を細かく意識すれば、寄付と募金は真逆の意味を持つのだ。

しかしながら、募金するという言葉が金銭提供を行うことを意味するものとして一般に認識されていることは明らかであるため、現状においてはこうした区別はあまり意識せずとも良いという風潮である。

とはいえ、「募金箱」に限って言えばこれはなかなかの曲者だ。「募金箱に金銭を投じること」イコール「募金」イコール「寄付」、という安易な認識には落とし穴がある。これは後述する寄附金控除等について検討する折に重要となるポイントであり、「単に募金箱にお金を投じること」と「所定の手続きを経て寄付をする」ことには大きな違いが生じる場合があるのだ。

これについては後ほど詳しく紹介するため、まずは「募金箱にお金を入れること」をそのまま「寄付」と同一視するのは危険であるということだけ意識しておこう。

義援金、支援金との違いをまとめて確認してみよう

義援金、支援金との違いをまとめて確認してみよう

最後に、義援金について確認しておこう。

義援金という言葉は、大きな災害が発生した時に一際頻繁に飛び交うものだ。これはイメージどおり、「被災地や被災者のために集められ活用されるお金」という認識で問題ない。しかし、これと併用されることの多い言葉に「支援金」があるが、この両者は似て非なるものであるため注意が必要だ。

また、これまでに見てきた寄付金との比較においては、「義援金」は大きく異なる立ち位置にあるということは是非とも押さえておきたいポイントである。

支援金

被災地での復旧や救助活動を行う「支援団体」に対して金銭を提供するという意味で用いられる。先に述べた寄付の定義である「公共事業への金銭提供」に該当するため、支援金は寄付の一種であると言える。

義援金

「各被災者」に対して送る金銭を指す。生活の立て直しの援助、応援やお悔やみの気持ちを示すことを目的としており、被災地での各種事業やそれを行う団体に対して贈られるものではない。つまり、寄付の要件である「事業」などへの金銭供与ではないため、言葉の上での定義において「寄付」とは言い切れない側面がある。

しかしながら税務上で最終的に寄付金として扱われるため、国語的な言葉の定義そのものはそれほど気にする必要はないだろう。これについて細かく補足しておくと、個人の義援金はふるさと納税扱いとなるため結果として「寄付」となり、法人の場合は国への寄付という形になる。

つまり、こうした法律上の解釈を深めれば、結果的に義援金も「寄付」の枠に収まるというわけである。

このように、義援金だけは「被災した個人に対してお金を届ける」という方向性であるため、寄付・募金・義援金を語る上ではこの点に留意しよう。

「困っている人に金銭援助を」と漠然と思い立った際には、「支援団体の活動をサポートする金銭供与」「困っている人への直接的な金銭援助」のどちらを希望するのかという観点から、寄付・義援金のいずれかを選択するということになるのである。

義援金に関してもう少し補足すると、「〇〇地震義援金」「台風○号被害義援金」といった具合に、災害ごとに受付窓口が個別に設置されるケースが一般的である。また、税務上の各種優遇を受ける上では、基本的に「災害救助法が適用される災害に対する義援金」が対象となることが多いため特に注意が必要だ。

さらに、基本的にこれらにはそれぞれ受付期限が設けられているため、特段の希望がある場合には早めの手続きを心がけると良いだろう。

募金と寄付の違い:税金納付額に影響する

募金と寄付の違い:税金納付額に影響する

寄付や募金は、前提として無償で金品を供与することを指すが、「寄付や募金をしても何の得もない」と考えるのは早計だ。浄財や徳を積むといったスピリチュアルな論点もあるが、より具体性のある「節税」というメリットが存在するのである。

「寄付で節税」という字面だけを見れば、莫大な資金力のある大富豪や有名企業の税金逃れというイメージが先行しがちであるが、実はごく一般的な年収の方にとっても極めて身近な制度であり、法に基づく健全な資産管理の手法である。

とはいえ、節税を検討する上での「寄付金」「募金」「義援金」の取り扱いには差があるため、慎重な判断が必要だ。寄付や募金による節税の身近な例として、主に下記の4つの方向性があげられる。

所得税納付額を小さくする(毎年発生)

もっとも一般的な方向性であり、正式な手順を踏んで寄付・申告手続きを行えば限度額の範囲内で誰にでも適用される。

住民税納付額を小さくする(毎年発生)

ふるさと納税による寄付で適用されることが特に有名である。特に個人が行う場合、一定の条件内に収まればそれほど複雑な手続きを必要とせず、簡便性という面においてひときわ優れることが多い。

固定資産税を少なくする(単発)

固定資産を寄贈することなどによって、当該資産にかかる固定資産税をカットすることができる。寄贈してしまえばそれ以降はその資産に対する固定資産税の発生そのものがなくなるため、基本的に単発の案件となる。

相続税納付額を小さくする(単発)

遺産の相続に際して、当該遺産を寄付等することによって適用される。特定の寄付先を選択すれば非課税とすることも可能である。

ここで誤解のないように認識しておきたいのが、いずれの場合も「寄付として支出した全額が丸ごと税金の減額に直結したりキャッシュバックされたりするわけではない」ということだ。これを理解するため、簡略化した所得税発生の態様を例に挙げ、その大まかな計算手順と寄付金が効果を発揮するタイミングを確認しておこう。

前提として、所得税は下記の手順で計算される。ここでは簡略化するために、個人・法人の厳密な用語の区別はせず、平易な言葉で説明する。

  1. その年に稼いだお金―稼ぐために使った費用=儲け
  2. 儲け+稼いだわけではないものの儲けとして見なすもの―稼ぐために使ったわけではないものの費用としてみなすもの=所得税計算の対象となる最終的な儲け
  3. これに一定の率をかけたもの=所得税
  4. この所得税額に更に調整を加える=最終的な納税額

税務での計算手順においては、「益金―損金」という考え方で初めから一気に2)を求める手法が示されることが一般的である。しかしこの「益金と損金」の定義は、事業活動において年間を通して行う「会計処理上の収益と費用」の定義と若干異なっている。

そのため、一般的な会計処理1)を行い、年度末の決算時点で2)以降の計算による調整を行なって最終的な税額計算を行うという流れが実務上は一般的だ。

では、寄付が効果を発揮するのはどのタイミングかお分かりだろうか。これは、法人・個人事業主のいずれかの区別によって回答が異なる。

法人の場合

稼ぐために使った費用として一旦計上し、費用計上の限度額を超えた分を「費用としてみなすものを削る(つまり、結果的に足し戻す)」という二つのタイミングで登場する。

また、寄付の種類によっては、いったん算出された税額に直接一定額の調整を加えることもある。すなわち、先に示した手順でいえば1)と2)と4)のタイミングで登場するのである。

個人事業主の場合

費用として計上することはできないため、調整額として計算に反映させる。2)と4)でのみ登場することになる。上記はあくまで概論であるため多少の例外はあるものの、大まかに言えばこうしたタイミングで寄付金は節税効果を発揮するのである。

極めて大雑把に言えば、年間を通して儲けた金額が大きければ大きいほど税額は大きくなるのであるから、税金計算においての寄付の位置付けは、この「儲け」を小さくするマイナス要素として価値があるということだ。

また、別枠として、最終的に算出された税額から直接減額することができる4)の効果も節税として非常に魅力的であることは言うまでもないが、ここで減額されるのは寄付した全額ではなく、寄付金から所定の金額を差し引いた額や所定の率をかけた額である。さらに、これが適用できる寄付は具体的に指定されているため、活用したい場合は念入りに下調べを行おう。

ここで寄付、募金等の違いを税金の観点から再度確認しておこう。寄付はもっとも広い意味合い持つ言葉であるため、上記のいずれにも該当すると言える。募金においても、金銭を供与する側からすれば寄付とほぼ同義であるため、いずれも適用する機会がある。

特殊な立ち位置にあるのは義援金だ。先に述べたように、国語的な定義だけで言えば寄付ではないものの、税金の論点に限って言えば、

  • 個人の場合:ふるさと納税に該当
  • 法人の場合:国への寄付に該当

という位置付けになるため、正しい手順を踏んで手続きを行えば節税効果が得られるという認識で問題ないが、その効果に若干の違いが出る点に注意が必要だ。

このようにやや複雑ではあるものの、いずれの場合も何らかの節税効果が期待できるものであるため、積極的に活用を検討すると良いだろう。

募金で寄付金控除が適用されないケースとは

寄付が税金に及ぼす影響を紹介したが、これには大前提として「寄付や募金を行ったこと」を客観的に証明できる証拠が必要だ。確定申告等を行う際にはこうした証拠書類の提出が必要となるので注意しよう。無論、これがなければ各種控除は適用されない。

こうした証拠書類は寄付等を受け付けている団体が発行してくれるものであるため、節税を意識した寄付を考えているのであれば、これらの書類が発行されることをしっかりと確認しておくことが望ましい。

ここで、序盤でのべた「募金」の認識を再度確認しておこう。極端な例で言えば、ポツンと置かれた無人の募金箱にどれほど札束をねじ込んだところで、それを証明することができなければ節税としての効果はもちろん見込めないのである。

「募金箱にお金を投じることイコール募金イコール寄付なので節税になる」と安易に考えてはいけないという理由はここにある。寄附金控除が適用されないケースの具体例として、認識しておくと良いだろう。

また、穿った見方をすれば、こうした証明書を発行してくれるか否か、あるいはこうした手続きについて明瞭な説明を行ってくれるか否かという確認作業は、寄付等の受付団体の信頼度を図るうえで便利な指標となる。

こうした確認を行うことは、結果として「寄付しても大丈夫そうな団体」を見極めることにもつながると言えよう。

総括:募金と寄付の違い:目的は明確に意識しよう

寄付や募金の違いを述べてきたが、総括としては言葉そのものの意味よりも、金銭等を提供する目的が重要であると言える。つまり、その目的が「単なる人助け」か「節税」かによって、その意味合い、さらには採るべき選択や着眼点が変わってくるということだ。

単なる人助けが目的である場合

  • 寄付:支援や公益事業を行う団体に対して金銭や物品を提供する
  • 募金:ほぼ同上
  • 義援金:被災地の人に対して金銭そのものを提供する
    →共通事項として、寄付等の受付を行なっている団体が信用に足るか否かの判断が重要

節税が目的である場合

  • 寄付:効果を発揮する税金の種類の確認、上限額や特殊な法律が適用される寄付先の選定などに注意が必要
  • 募金:ほぼ同上。ただし「募金箱」には注意が必要であり、無人の募金箱はまず避けた方がベターである。また、有人の受付窓口等であっても、正式な証明書を発行してもらえるか否かを必ず事前に確認することが望ましい
  • 義援金:個人か法人かによって税務上の取り扱いが少し異なる点に注意が必要
    →共通事項として、法的に効果のある証明書を発行してもらえるか否かの確認が重要

総じて、善意の元に金銭や物品を提供したいという気持ちそのものが何にも変え難いほどに尊いものであることは間違いない。しかしながら、寄付等する相手先や金額、タイミング等によって思わぬメリットが生じることもあるという事実は、知っておいて損はないと言えるだろう。

メリットが無いなら寄付をしない、という判断を推奨するわけではないものの、これからの寄付を検討する上で是非とも参考にしてほしい。

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